横浜でラーメン巡りといえば、新横浜ラーメン博物館を思い浮かべる人も多いかもしれません。
でも、横浜駅から東急東横線でわずか一駅。
反町(たんまち)駅を降りて歩いてみると、「ラーメン星印」「自家製麺SHIN」「横浜家系ラーメン 中島家」など、評価の高いラーメン店が驚くほど狭いエリアに集まっています。
醤油、塩、家系、魚介系、二郎系……。タイプもさまざまです。
最初から「ラーメンの街」として作られたわけでもなさそうなのに、なぜ反町にこれだけの店が集まったのでしょうか。
今回は、そんなちょっと穴場のラーメンストリート「反町」を歩いてみました。
横浜駅から一駅に、こんなに評価の高いラーメン屋さんが!
まずは反町周辺の主なラーメン店を並べてみます。

こうして並べてみると、なかなか壮観です。
しかも、一つの系列の店が集まっているわけではありません。
2000年のShiNaChiKu亭をはじめ、2007年に田ぶし、2013年にSHIN、2014年には夢と星印。その後、中島家、MEN YARD FIGHTと、20年余りで、一軒、また一軒と個性的な店が集まってきたことが分かります。
なぜ、反町に名店が集まったのだろうか
これだけ店が集まっていると、
「反町はラーメンの街として計画的に作られたのでは?」
と思いたくなります。
でも、調べてみると少し違うようです。
例えば「ラーメン星印」の店主は、もともと別の場所で開業する予定だったものの、その話が直前でなくなり、地元からの近さや資金面などから反町の物件を選んだとインタビューで語っています。
しかも、それまで反町で降りたことがなく、実際に来てラーメン店の多さを知り、「失敗したかな」と思ったほどだったそうです。
中島家も、もともとは浅間町で営業していた店です。
火災の影響で店を閉めることになり、移転先を探した結果、条件の合う物件が反町で見つかり、2016年に営業を再開しました。
つまり、有名なラーメン街だから店が集まった、という単純な話ではなさそうです。
それぞれ違った歴史を持つ店がこの街にやってきて、結果として実力店が集まっていった。
「自然発生的にできたラーメンストリート」と呼びたくなるのは、そんなところからです。
星印で蘇った、20年前の一杯


反町を代表する人気店の一つが「ラーメン星印」です。
この店について調べていて、「支那そばや」の名前を見つけたとき、20年ほど前の記憶が蘇ってきました。
佐野実さんがご存命だった頃、鵠沼海岸にあった「支那そばや」へは一度だけ行ったことがあります。
そこで食べたラーメンに感動しました。
もう20年ほど前なので、細かな味まで説明することはできません。
でも、
「ラーメンって、こんなにおいしくなるんだ」
と思ったことは、今でも覚えています。
星印の店主は「支那そばや」で経験を積んだ方。
昔、鵠沼海岸まで食べに行った一杯の記憶が、長い時間を経て、反町で思いがけずつながりました。
中島家。「この店主、どこかで見たことがある」


もう一軒、私にとって特別なつながりがあったのが「横浜家系ラーメン 中島家」です。
以前、保土ヶ谷に住んでいた頃、浅間町にあった中島家が好きで、何度も通っていました。
その後、大田区へ移ってから、よく通うようになったのが矢口渡にあった「こうや」です。
ところが、ある時「こうや」が閉店。
好きだった店だけに、突然なくなってしまったことをとても残念に思いました。
一方、浅間町の中島家も、何度か店の前を通ったときに店がなくなっていることに気づきました。
「中島家もなくなってしまったのか……」
そう思っていました。
ところが後になって、中島家は火災の影響で浅間町の店を閉めた後、2016年に反町へ移転して営業を再開していたことを知りました。
さらにネットで調べてみると、中島家の店主は、私が大田区でよく通っていた「こうや」の創業にも関わった方だったという情報を見つけました。
それなら、反町の中島家にも行ってみよう。
そう思って店を訪れ、厨房を見ていると、
「この店主、どこかで見たことがあるな……」
しばらくして、記憶がつながりました。
昔、浅間町の中島家で何度も見ていた店主だったのです。
保土ヶ谷に住んでいた頃に通った中島家。
大田区に移ってから通ったこうや。
そして、現在の反町の中島家。
自分では別々の店として食べに行っていたのに、後になって一本につながりました。
以前、中島家の店主から、家系ラーメンの海苔に麺を絡めるようにして食べる方法を教えてもらったこともあります。
それ以来、家系ラーメンを食べるときの、私なりの楽しみ方の一つになっています。
ラーメン博物館とは違う楽しみ方
横浜には、新横浜ラーメン博物館があります。
全国各地のラーメンを一か所で楽しみ、昭和の街並みを再現した館内を歩く。
これはこれで、とても楽しい場所です。
でも、反町にはまったく違った面白さがあります。
こちらはテーマパークではありません。
普通の街です。
その普通の街を歩いていると、星印があり、中島家があり、SHINがあり、少し歩けばまた別のラーメン店があります。
誰かが名店を集めたのではなく、それぞれの歴史を持った店が、20年以上かけて少しずつ集まってきた。
しかも、入場料はいりません。
一日で何軒も食べ歩く必要もありません。
今日は星印。
次は中島家。
その次は、一覧表を眺めながら気になった店へ。
横浜駅からわずか一駅なので、「今日は一杯食べに反町へ」という楽しみ方ができます。
全国の名店を集めたラーメン博物館と、いつの間にか名店が集まった反町。
同じラーメンを楽しむ場所でも、その成り立ちも楽しみ方もずいぶん違います。
ラーメンを食べに来たはずが、昔の自分に出会った
今回、反町のラーメン店について調べ、実際に歩いてみて、思いがけず昔のことをいろいろ思い出しました。
20年ほど前、鵠沼海岸の「支那そばや」で食べて感動した一杯。
保土ヶ谷に住んでいた頃、何度も通った浅間町の中島家。
大田区に移ってから通った「こうや」。
それぞれ別の場所、別の時期の思い出だったはずなのに、反町を歩いているうちに、一つひとつがつながっていきました。
新しいラーメン店を探していたはずが、いつの間にか昔の自分にも出会っていた。
おいしいものを食べることだけが、贅沢ではないのかもしれません。
昔好きだった味を思い出したり、その頃住んでいた街や生活を思い出したり。
時間に少し余裕ができた今だからこそ、そんな寄り道も楽しめます。
自分の思い出が蘇る。そんな贅沢な時間を、反町からもらいました。
